パッシブ化の流れはより鮮明に。このトレンドが続くとどうなる?

こんにちは。YUMAです。

特に最近の話というわけではないのですが、ここ数年、資産運用の世界ではパッシブ化の流れがより鮮明になってきています。日本もグローバルも含めてです。

パッシブ化というのは、アクティブファンドを買う人が減ってきて何らかのベンチマークに連動するインデックス(パッシブ)ファンドを買う人が増えてきていることを指します。

理由1:インデックスファンドのコスト競争

その大きな理由の1つは、インデックスファンドのコスト(信託報酬)が格段に低くなってきていることです。

日本においては、つみたてNISAの導入がコスト競争に火をつけたと言えます。

海外においては、世界最大のパッシブ運用会社であるバンガードが継続的にETFの手数料を引き下げてますし、昨年は米国でフィデリティが信託報酬ゼロの投資信託を出しました。

また、アンバンドリング、すなわちファンドに支払う手数料と営業マンに支払う手数料を明確に分けなさいという流れが出ています。営業マンのトークなど聞かなくても自分で情報を集めて判断できる人は最もコストの低いファンドを選ぶようになっているわけです。

理由2:アクティブファンドは平均するとベンチマークに負ける

これはよく言われる定説で、ベンチマークを市場平均とした場合に、市場参加者全体を足すとベンチマークを構成するわけですから、全てのアクティブファンドを平均すると理論上は必ずベンチマークと等しいパフォーマンスになります。

むしろ、手数料の分だけ必ずマイナスになる。

したがって、色んなアクティブファンドを見れば優れたパフォーマンスのものからダメダメなファンドもあるけども、平均すると市場平均なのだから最初からインデックスファンドでいいよね、という理屈です。

パッシブ化の流れがより進むとどうなるのか?デメリットは?

パッシブ化のトレンドは望ましいのでしょうか?

熾烈なコスト競争で信託報酬が下がること自体は投資家にとって大きなメリットですね。

デメリットはないのでしょうか?

グローバル大手の運用会社であるAQR Capital Management から興味深いレポート(PDF)が出ています。これの12ページ目に”Implication of the Growing Share of Passive Investing”というタイトルでパッシブ化が進んだ場合に起こり得ることが考察されています。簡単にご紹介します。

市場の価格発見機能が劣化する?

アクティブファンドは市場のミスプライシングを探し利用することで収益をあげます。不当に安い銘柄を買い、高い銘柄を売るわけです。

もし、世の中から多くのアクティブ運用が消え、パッシブ運用ばかりになってしまったらどうなるでしょう?

明らかに非効率な株価が付いていてもそれを是正する取引が行われないことになり、市場の根付けは間違え続けることになります。

しかし、現時点ではこの様な現象が起こるほどパッシブ運用の割合が高いわけではありません。ざっくりですがパッシブ運用が市場の8割ほどを占めてしまうと問題が生じるとしています。

実際にはそのような状況に至る頃にはアクティブ運用が超過リターンを出しやすくなっているはずで、自ずと成績の良いアクティブファンドにお金が戻ってくるだろうと予想されます。

スキルのパラドックス

パッシブ化が進むにつれて市場が効率的になるか非効率的になるかは、パッシブ運用のお金がどの投資家を飲み込むかに依存します。

つまり、パッシブ運用のお金が(スキルの低い)個人投資家などに取って代わるか、それとも(スキルの高い)機関投資家などに取って代わるかによって変わります。

モーブッシン(2017)の”paradox of skill”の議論によれば、市場参加者の質が高いほどベンチマークを上回るのは難しいとされます。市場平均を上回るかは相対的な勝負なので当然ですね。

したがって、スキルのない個人投資家が「もう個別銘柄の勝負では勝てないからインデックスファンドにしよう」となると、残ったアクティブファンドにとっては強者が残るシビアなゲームとなります。

逆に、スキルのあるアクティブマネージャーにも関わらず、「君はアクティブを今すぐやめて流行りのインデックスファンドを運用しなさい」となると残った市場は強いライバルが減るのでアクティブファンドは市場を出し抜くチャンスが増えることになります。

昨今の市場環境は前者に近い、すなわちアクティブマネージャーには厳しい局面なのではないかと想像されます。

リスクが高まる可能性

市場におけるパッシブ運用の割合が高くなると、それらへの資金流出入によって市場を動かすレベルの売買が生じるため、多くの銘柄が同じような値動きをするのでは?と指摘されます。

アクティブ運用であればマネージャーごとに意見や見方が異なるわけですが、パッシブ運用は基本的に皆同じポートフォリオとなるため、運用会社が違っても同じ売買が生じることなります。

つまり、システマティックリスク(共通変動要因)が高まることが懸念されます。

しかし、これも現段階ではそこまで心配する必要がありません。実際、2016~2017年のパッシブ化が話題になりはじめた頃においても、銘柄間の相関は下がっていたことが分かっています。

まとめ

結局、パッシブ化のトレンドが続いたとしても現実的に投資家の不利益になることはほぼないと言えるでしょう。

理論的にはデメリットとなる可能性は議論できます。

が、そのような状況になる前に自己抑制機能が働きパッシブ化の流れは止まる、もしくは逆回転すると考えられます。

その自己抑制機能もまた投資家の合理性によるものと言えるでしょう。

それではまた。