エストニアの教育はどうやってデジタル化に成功してきたのか?

こんにちは。YUMAです。

少し前の記事で世界の教育レベルを比較し、エストニアという国がトップクラスのランクだということを確認しました。

日本、韓国、フィンランドなどが上位に来るのはまだ分かるとして、なぜにエストニア?

エストニアの教育レベルが高い理由を調べました。

結論を一言でいうと、デジタル化された効率的な教育が実践されているからということのようです。

どうやって教育のデジタル化に成功したのかを考察します。

そもそもエストニアってどこ?

  • 公用語はエストニア語
  • 通貨はユーロ
  • 面積は日本のおよそ12%ほど
  • 人口は日本のおよそ1%ほど
  • 一人あたりGDPは日本のおよそ0.8倍ほど
  • 世界トップの電子国家
  • 旧ソ連の構成国でありソ連崩壊で独立
  • お隣のフィンランドは兄貴分であり文化的にも経済的にも仲が良い

出所はこちら↓

エストニアは世界一のIT大国です。Skypeはエストニアで生まれた企業です。

いまや、エストニアでは国民のおよそ半数がインターネット投票を使い、行政サービスの99%をオンラインで行うことができます。例えば出生届や転居届などですね。日本だと紙に書いて役所に並んでって感じですよね。

日本でいうマイナンバーカードに相当する個人のデジタルIDカードは2002年に既に導入されています。これにより、税申告、選挙における投票、健康保険などの公的サービスの手続きが効率化されました。PCにはその個人IDカードを挿入するスロットが付けられるようになりました。

個人IDカードで本人確認をすることであらゆる手続きが高速化されたのです。逆に言うと、これがないと何をすることも手間がかかります。

一般的なアプリやサービスでの本人確認のためには、ログインIDとパスワードだけでは不十分で、個人ID(必ずしもカードだけでなく今はモバイルIDやスマートIDもある)がないとログインはできないのです。

わが国では、マイナポイントとか言ってどうにかしてマイナンバーカードを普及させようと尽力しています。今まさに保険証と一体化させようだとかも取り組んでいますね。

それと比較すると同じ事を20年前に取り組んでいたエストニアのすごさが分かります。

デジタル化の歴史

OECDのこちらのレポートを参考にしてます↓

エストニアはどんな経緯でここまでのデジタル化が推進できたのでしょうか?

ソ連崩壊(1991年)後に大きな転換点となったのは1996年に打ち出した強烈な政策です。

この時点ではソ連からようやく解放された弱小国であったエストニアですが、教育こそ国力強化のための重要資源だとの指針を示し、Tiger Leap(エストニア語でTiigrihüpe)というプロジェクトを推進しました。翌年の1997年にはTiger Leap基金という組織も発足されています。

このTiger Leapプログラムは以下のことを目指しました。

  • 各学校がコンピュータを有しインターネットにアクセスできるようにする
  • 教師にコンピュータの操作方法を教育し生徒に教えられるようにする
  • デジタル教育が可能となるようなソフトウェアを開発する
  • 生徒のITスキルを育む
  • 地方自治体のICT導入を支援する

このTiger Leapプログラムを推進することで、エストニアはなんと2000年末時点で、

  • 全ての学校がインターネットにアクセスできる状況となり
  • 平均して生徒25人につき1台のコンピュータが導入され
  • 65%の教師がコンピュータの操作方法についてトレーニングを受けた

という状況となりました。

2000年の頃の自分や学校はどんな状況だったか覚えていますか?

私はPCなんて触ったこともなかったしインターネットという言葉もあまり分かっていなかったと思います(当時は中学生)。

このTiger Leapプログラムはその後、様々な改良と拡張がなされ、ネーミングも変化していきましたが、重要な最初のステップは1996年のTiger Leapだったのです。

世界トップクラスの教育

いち早くあらゆるサービスをデジタル化してきたわけですが、特に教育のデジタル化を強く推進してきました。

Estonian Educational Information System(EHIS)という教育に関するデータを管理するデータベースが政府主導で構築されました。2004年からです。

個人レベルでの生徒ひとりひとりの教育に関する様々な情報が蓄積されています。

各学校は生徒の教育に関するデータを入力することが「法律」によって義務付けられています。また、政府系機関や民間機関から様々な教育に関するソフトが提供されています。

例えば、eKoolというアプリは民間企業が提供しているものですが、生徒、親、教師、政府のコミュニケーションプラットフォームです。先生が生徒の宿題、出欠、成績などを記録することもできます。

e-koolikotは政府(日本でいう文科省)が提供するアプリで、教科書やゲームや基本的な試験に関するファイルが格納されており、生徒や教師が検索ワードを使って教材を探したりすることができます。

いまやエストニアの生徒は宿題もオンラインで提出するのが普通となっています。

感想

教育に限らず、エストニアの社会全体がここまで高度にデジタル化できた要因として、彼らの政策的な成功と努力以外に、当時には現在ほどサイバーセキュリティの問題が懸念されなかったからということが言われています。

Tiger Leapを打ち出したのが1996年、EHISの仕組みを作りデータを蓄積し始めたのが2004年。

この当時は今ほどサイバー攻撃などが深刻化する前の時代でした。

もし、今同じ事を真似て実行しようと思っても、セキュリティ面の懸念が当時とは比べようもないほどあるでしょうし、それらを理由にプロジェクト推進を妨害する意見も出てくるでしょう。

言ってみれば、エストニアは、今ほどサイバー攻撃などが世界的に重要視されるより前に、少数の優れた政治家たちによって強烈なリーダーシップを持ってデジタル化を進めたのです。早く始めたことが功を奏したように思えます。

私の疑問は、日本も同じように教育現場が早くにデジタル化していればさらに子供の能力は高まっていたのか、という点です。

日本は先進国の中ではデジタル化が最も遅れていると言われています。しかし、PISAのランキングでは皮肉にも日本はエストニアと同等のトップクラスを維持しています。

これはどう考えれば良いでしょうか?

エストニアのPISAスコアが高いことと、デジタル大国であることに因果関係があるのかもしれませんが、日本というサンプルによってそれだけが主要因ではないことを示しています。

このあたりの論点が今後調べていく対象になるでしょうか。

しかし、教育レベルの高低の要因を説明するのは非常に難しいので、やはり定性的な意見のどれかを信じるしかないような気もしています。

それではまた。