マーサーの年金ランキング:日本の年金制度は36位(43ヶ国中)だがそれより日本は年金の男女格差が目立つ

こんにちは。YUMAです。

マーサーが毎年算出している世界各国のグローバル年金指数の2021年スコアが発表されました。2年前の2019年に発表された時に詳しく解説した投稿をしていました。

2年前は日本は37ヶ国のなかで31位というよろしくない評価でありましたが、今年はどのくらい変わっているでしょうか?

グローバル年金指数とは

以前の記事に計算方法を書きましたが、簡単に言うと以下のようなイメージです。

ADEQUACY(十分な給付か?)、SUSTAINABILITY(年金制度は持続可能か?)、INTEGRITY(年金制度運営は健全か?)といった観点で各カテゴリの中で細分化された指標をスコア化し、これらを合成して各国ごとに年金指数を算出します。

スコアに応じて上から、A, B+, B, C+, C, D, Eとレーティングが付きます。

2021年の年金指数ランキング

さっそく2021年の年金指数ランキングを見てみましょう。


ランキングで言うと日本は世界43ヶ国のうち36位です。やはり今年も非常に厳しい評価です。

トップは今年から評価対象国となったアイスランド。これまで1位であったオランダは2位となっていますが、北欧諸国やオランダの間での点数差はほとんどありません。

最下位はタイ。先進国が上位、新興国(主にアジア諸国)が下位にランクするという傾向があります。

3つのカテゴリで世界平均点と日本の点数を比較すると、日本は相変わらずSustainability(年金制度の持続可能性)の部分で非常に足を引っ張っていることが分かります。

これを分かりやすく見るため、スコアにしたがってA~Dにグレード付けした表を貼ります↓

日本はAdequecy(十分な給付か?)がC評価、Integrity(年金制度運営は健全か?)がC+評価とあまり芳しくはないのですが、SUSTAINABILITY(年金制度は持続可能か?)においてはD評価となっており、特に評価が低いことが分かります。

日本の年金システムは破綻する恐れは当面ないものの、このままの給付水準が持続することもないことは周知の事実であり、なんらかの改革というか工夫が求められています。

自民党総裁選のときに河野太郎さんが抜本的な年金改革を標榜しておりましたが、まさに手を付けなくてはいけない喫緊の課題と言えます。

若者世代が将来の年金に対して漠然と抱えている不安、まさにそれが素直に表れている評価と言えます。マーサーが評価しようと誰が評価しようと、日本の年金制度がこのままで持続できるはずないことは分かっているのです。

日本は年金受給額における男女格差が大きい

このマーサーのレポートは毎年、年金指数ランキングと併せて、特集トピックで分析が織り交ぜられています。

今年の特集トピックは男女の年金格差(Gender gap)です。

以下のグラフは、単純に、「今の年金受給者における女性の年金額は男性よりもどれだけ少ないか」を示すものです。

男性の年金の平均額が100万円、女性が70万円だとすれば、縦軸は30%となります。

すべての国で数値はプラスなので、女性の方が年金受給額が多い国はありません。

最も男女格差が大きい国は我が国、日本です。50%近くとなっており、女性の年金受給額は男性のおよそ半分程度となっています。

続いてメキシコ、オーストリア、英国となっています。

実は年金指数ランキングでは常にトップであったオランダは6番目にランクインしており、年金制度そのものの質と男女格差は全く別のものと言えるでしょう。

なぜ日本の男女格差は大きいのか?

男女格差の要因は複合的であり、レポートでも「これさえ解決すれば良い」という単一の解はないと論じています。

そのうえで、男女格差に大きな影響を及ぼすファクターとして「雇用」「年金制度の仕組み」「社会・文化」を挙げています。

このうち、おそらく「雇用」による要因はかなり多くの部分を説明すると思います。

つまり、稼いでいる金額や働いた年数において、女性は男性に比べて圧倒的に不利となりやすい。

年金の納付期間という意味で十分な期間を満たさなかった女性は多いと思いますし、厚生年金で言えば収入額は納付額や受給額に直結します。

しかし、この点は産休育休制度の充実を図り女性の復職を促すように政府も力を入れて変えていく意思を感じます。

実際に民間企業においてもSDGsの風潮の高まりなどと相まって女性の管理職を増やそうだとかの流れもあります。

少しずつ改善されていくのではないかと考えています。

もうひとつ重要なのは「社会・文化」ですね。

これは雇用の問題とも密接に関係しますが、やはり男が働き女は家を守るべきだなどという古い風潮があろうものなら、女性の社会進出や収入上昇、それに伴う年金受給額の上昇は妨げられるでしょう。

古い伝統や古い考え方を変えていかなくてはなりません。

感想

諸々と考察を述べてきましたが、根本的に思うのは、高齢化が進んだ国と他とを比べると、外見的にはやはり高齢化社会の方が年金制度の仕組みは脆く見えるのではないでしょうか。

年金指数ランキングでは上位にいるような国々が日本と同じような高齢化先進国になった場合、今と同じような高い評価を得られる年金制度を維持していけるのか。

もしくは維持しようとする為政者は信頼を得られるのかという点は非常に難しいと思います。

そういう意味では、日本は高齢先進国、課題先進国であるがゆえに、どう対処したら分からない年金制度の維持という問題に対して、四苦八苦している状況が低評価に繋がっているのかもしれません。

しかし、これらはいずれどの国もが直面する課題ですから、高齢化までまだ少しだけ余裕があると思っている国も余裕を感じるているわけではないでしょう。

それではまた。