原油の暴落で判明した原油ETFのリスク

こんにちは。YUMAです。

原油価格が一時マイナスとなるなど、原油をめぐる投機的な動きはめまぐるしく動いており見ていて面白いものがあります。

株式と違って原油はファンダメンタルに将来を占う要素が小さいため、ギャンブル的な位置づけは根強くあります。私もその立場で原油で資産形成を考えるべきではないと考えています。

ここ最近の原油ETFのニュース

今回の「原油価格マイナス」で投資家の資産形成に影響しそうな出来事は何でしょうか?

以下はニュースの抜粋です。cis氏のツイートも引用されていますね。

21日に起きた米原油先物相場の急落に、2つの上場投資信託(ETF)が寄与していた。マイナス価格になる事態を恐れ、エクスポージャーを期先物に移し期近を大量に売却した。ファンドの提出文書に基づきブルームバーグが算出したところによると、ユナイテッドステーツ・オイルファンド(USO)とサムスンS&P・GSCI原油ERフューチャーズETFは21日に、中心限月のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物6月限を合計で約11万枚売った。前日の引け時点での建玉残高の19%に相当する。

先週24日、東証は原油関連のETF(上場投資信託)やETN(上場投資証券)の値動きについて投資家に注意喚起した。上場する5つの投資商品について、原油先物価格の急落など原資産の値動きが大きいことから、各投資商品の値動きも拡大しやすいほか、WTI先物をはじめとする指標と投資商品の値動きに乖離が生じやすいとして、投資にあたっては価格変動の大きい商品であることに留意するよう求めた。こうした注意喚起は、それまでも野村証券やSMBC日興証券などが行っており、トレードで230億円稼いだとされる個人投資家、cis氏も17日のツイッターで「原油系ETFで勝負してる人が最近増えてるけど、原油価格で勝負できるわけじゃないので注意」などと呼びかけていた。

総じてレビューするならば、今回の原油価格の暴落は期近物の話になります。

コロナショックとその後の経済低迷により原油に対する需要が小さくなる、そのためにOPEC+は減産して価格を維持したらよかったけどそれはしない、結果として原油余りが引き起こされ貯蔵しておく場所もなければコストを払ってそれをしようとする者も少なくなる。

結果として「誰も必要としない原油」となり、NYではコストを払ってでも処分したい(取引所に行けば原油とお金を貰える)人が出てきた。という流れですね。

CMEでは原油先物の決済は現物決済であるために困った人が大勢出てくるわけですね。「原油ロングだったけどうちに届けられても貯蔵する場所も施設もないぞい」と。そりゃ決済日直前で売りますよね。

で、マイナスの原油価格になったわけですが、原資産がマイナスになったらそれに連動するETFはどうなったか?やばいんじゃないの?となるけれど強制償還とかにはなってません。

それはなぜかというと、ETFではすでに期近(5月)からもう一つ先の期先(6月)にロールオーバーしていたからです。マイナスになったのは決済が迫った期近の話です。

もし原資産がマイナスになったら基準価額がマイナス、つまり投資信託としてはやっていけいないし、マイナス分の補填をどうするのかという話になります。そりゃどの運用会社も全力でそれを避ける行動に出ます。

ETFの投資先の一部は期先へ

ここまでは普通の話なのですが、現状の原油価格のボラティリティの高さを鑑みて、ETF大手の各社は何をしているかというと「期近物はまたいつマイナスになるか分からないほど値動きが激しい、一部は期先物にも振り分けていこう」という流れです。これは国内ならば野村をはじめ、世界トップの原油ETFプレイヤーであるユナイテッドステーツ・オイルファンド(USO)も同じです。

つまり、期近と言うのは投資家の心理的な動きを最も反映しやすく、期先になるほどより長期的な予想に基づいて値付けがされます。よって、原油価格がマイナスとかありえない状況は、様々な投資家の都合(先述した貯蔵できないとか)によって一時的に発生するだけで期先ならばその可能性は低いだろうということで期先にも分散投資されたわけです。

期近ほど値動きが激しくて、期先ほど値動きが大きくなるという特性を考えてみます。すると、本来は期近に100%投資すべきETFが急遽期先にも投資先を振り分けていくというのはリスクを落としているということになります

期近はあまりにも値動きが激しいからおとなしい期先も混ぜていこう、という話ですね。

期先へ投資することの意味

これはこれで正しい運営の仕方だとは思います。ですが、原油ETFを買っている投資家はそれを分かっているでしょうか?

原油価格が暴落したとかマイナスになったとかニュースを見て、あまりに安いだろうから買うというアクションをとった投資家はこの事実を知っているでしょうか?

暴落したりマイナスになったのは期近の話であって、原油ETFはすでに期先にも投資されています。つまり、劇的に原油価格が回復してもその恩恵を得られるかと言うとその可能性は低いわけです。

また、期近に投資する理由の一つには流動性の問題もあります。期近ほど売買は活況で期先になるほど売買は薄くなります。つまり、期先になればなるほど出来高が少ないのでETFの設定/解約やロールオーバーに伴うトレードコストがかさむことになります。

また、何よりも心配なのが「期近は心配だから期先にも分散投資しよう」という発想とその実際のアクションが、大手のETF運用会社で共通していることです。ニュースでも取りざたされていますが、大手のETF運用会社が一斉に同じ行動をとることによって一方的なトレードが行われ、原油先物価格も一方向に崩れやすくなります。

限月の分散投資によってリスク回避できたつもりでも、実はライバルとなるプレーヤーも全く同じ行動をとっていることで、危機時のリスク回避にはなっていないという可能性が大いにあります。

原油ETFはやめとけ

今回の原油暴落で個人投資家による原油ETF投資へのニーズが増しているそうです。

先述の野村やUSOではETFの上限額を引き上げてさらなる投資家の資産を預かろうとしています。

私が一貫して思うのは個人の資産形成に原油ETFはやめておけ、です。

株式に比べて原油自体の値動きが後講釈でされやすい。後講釈でも説明ができないことが多い。加えてETF投資ではその中身の投資行動が不透明でパッシブ投資とは言いにくい。

あまりに原油が安くなっているということで投資したくなるのは私も同じなのですが、そこはぐっと我慢して原油への投資は見送るべきです。

どうしても投資したいのであればFXと同じノリでCFDのように短期間での勝負に徹するのが良いのではないでしょうか。

それではまた。