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株式市場の拡大はわずかな成長銘柄に牽引されてきた!ほとんどの銘柄は足を引っ張るのみ
こんにちは。YUMAです。
今回は発展目まぐるしい米国株市場についての研究紹介です。
米国株は長期にわたり右肩上がりの成長を続け、割高との声がある今もなお上昇を続けています。米国株市場はたくさんの銘柄で構成されているわけですが、その貢献度合いには大きな差があります。
実際は、一握りのスーパー成長銘柄が圧倒的な業績成長と株価上昇を伴い、時価総額を拡大させることで米国株市場の歴史を引っ張ってきました。残りの大多数の銘柄はほとんど貢献しないばかりか、むしろ足を引っ張ってきたのです。
そう、これは「一部の貢献が全体を支えている」というよく見かける構図です。
こう聞いたらあなたはどう思いますか?私たちはそこから何を学べるでしょうか?
今回の元ネタ論文です↓
“Do stocks outperform Treasury bills?”, Journal of Financial Economics, Sep-2018
Hendrik Bessembinder
研究の要旨
- 1926-2016年における米国の全上場銘柄である25,332社の配当込み株価リターンから、T-bill(短期国債)に対する超過リターンを計算する。
- この超過リターンを時価総額換算した金額で計算する。時価総額100億円の銘柄の対T-bill 超過リターンが+10%であれば+10億円ということ。
- 合計したものを株式市場全体における成長、つまり富の創出(wealth creation)として定義する。1926-2016の間に約35兆ドルのwealth creationがあった。
- どんな銘柄がwealth creationに寄与したのか?
- 25,332もの企業があるなかで、Top 5 (Exxon Mobile、Apple、Microsoft、GE 、IBM)で全体の成長の10%を占めてしまう。Top90銘柄で成長の半分以上を占める。
- そして、なんとTop1,092銘柄で全体の成長を占めてしまい、残りの約24,000銘柄は足してもゼロ。つまり、成長と減衰が相殺しあう程度でしかない。
- あくまで計算上になるが、これら24,000銘柄が存在しなくても過去90年の市場全体のwealth creationはきちんと達成されていたということになる。
検証結果をグラフで見ていく
このグラフ↓は、各銘柄の時価総額の拡大金額の大きい銘柄順に左から足し込んでいったもの。過去90年の市場全体のwealth creation(約35兆ドル)が100%になるように調整してあります。
左の曲線が一気に伸びて100%に到達してますね。つまり、約1,100銘柄ほどのわずかな銘柄でwealth creation の100%を占めてしまいます。他の銘柄も時価総額を成長させているのでさらに伸びていったん120%位までいく。
しかし、マイナスの超過リターンとなり足を引っ張る銘柄(T-bill利回りよりも低い株価リターン)も多いため、せっかく100%を越えても銘柄を足すにつれて徐々に減っていき25,332銘柄を足したところで100%になっています。
このグラフ↓はTop 1,100を拡大したもの。つまり、上のグラフの左の1,100銘柄部分だけを切り取ったもの。
再確認ですが、やはり成長してきた1,100程度の銘柄のwealth creationが米国株市場全体のwealth creationのほぼ100%を占めていることを物語ります。
なんでこんなことが起こるのか?
リターン分布によるカラクリ
それは株価リターンが持つ幾何分布的な性質のため。簡単に言えば、株価は「上は青天井で無限だけど下は倒産しても有限」だということです。
テンバガーとは株価が10倍になる銘柄のことですが、10倍になるということはリターンは+1000%ですね。100倍になったら10000%。逆に、倒産して紙くずになってしまう銘柄でもリターンが-100%より小さくなることはあり得ません。
こちら↓は各銘柄の投資家リターン(年率換算)の分布を見たグラフ。
0%近辺にピークがあります。-100%の銘柄もまあまあありますし、+200%や+300%といった銘柄もそこそこあります。
要はこのグラフが非対称であること、右側に裾が長いということがカラクリです。
このような株価リターンの特徴により、成長銘柄はガンガン市場を牽引し、逆にダメな銘柄はボチボチにとどまるか最悪でも-100%で退場する。なので、一部の銘柄が全体を引っ張るという構図が出来あがるのです。
Top Performerの顔ぶれ
最後に、「じゃあ具体的にどんな銘柄が株式市場を引っ張ってきたの?」に対する答えです。
↓各銘柄の生涯のwealth creationのランキングです。
誰もが知っている企業が並んでいます。その中でApple やMicrosoft は相対的に若い企業として上位にランクインしていますね。
私たちが学べること
ここで言えることは、
なんせ歴史的には25,000社の中の1,100社によって株式市場は牽引されてきたし、他の24,000社を合わせるとT-bill(短期債券)利回り程度にしかリターンをもたらしてこなかったのです。
個別銘柄を分析して成長企業をピックするのはプロでも難しいと言われる所以はここにあります。
この研究結果を見て、「うぇ~銘柄ピックって難しそう」と感じた人は幅広く分散されたファンドに投資すべきです。逆に、銘柄分析への意欲が出てきた人は個別株投資をすると良いでしょう。
それではまた。