【スキルのパラドックス】スキル(実力)とラッキー(運)の関係

こんにちは。YUMAです。

ポーカー、スポーツ、投資。あらゆる勝負の結果を決めるのは「スキル(実力)」と「ラッキー(運)」です。

これには疑いがないでしょう。

スポーツ選手などは、ラッキー(運)はコントロールできないためスキル(実力)を上げることに注力しますね。

そうすると結果は改善するでしょうか?

残酷なことに必ずそうとも言い切れません。これはスキルのパラドックスと呼ばれるものです。

今回はこちらの英語レポート(PDFが開きます)を参考に紹介します。

スキルのパラドックス
    自分の絶対的なスキルを向上させても周りの人のスキルもそこそこ上がっている場合、勝負の結果にはほとんど影響を与えることができない現象

結果のバラツキは実力と運のバラツキによる

スキルのパラドックスとは、「投資の科学」という有名な本の著者であるマイケル・J・モーブッシンが主張したアイデアです。

Variance(result)=Variance(skill)+Variance(luck)

が成り立つとします。Varianceは分散、つまり標準偏差の2乗で要は「バラつき度合い」のことです。

勝負の結果はskillとluckで決まるのだから、結果のバラつき度合いもまたskillのバラつきとluckのバラつきで決まるということを表しています。

自然な発想ですね。

例として、ゴルフのスコアを「結果」したときを考えてみましょう。

10人のプレイヤーがある日にゴルフをプレーしました。スコアにはバラつきが出ました。これは実力にそもそもバラつきがある場合は当然ですよね。ベテランの上手な人もいれば初心者もいるからです。

一方で、運によるバラツキも存在したはずです。たまたま当日の体調が悪くて実力が出せなかった人や、急に強い風が吹いて思ったようにショットが打てなかった人もいるかもしれません。

10人のスコアのバラつきは実力のバラつきと運によるバラつきによって決まることが分かります。

ここで、仮にこの10人全員が同じくらい上手な人達の集まりだったとしましょう。

そうすると10人のスコアにバラつきはあるもののそこまで大きくはないでしょう。実力が均衡していればバラつきが小さいからです。一方で、運によるバラつきは依然として残るはずです。

ほぼ同じ実力の人たちのスコアのバラつきは運によるバラつきが支配的になります。つまり、ほぼランダムな結果になってくるのです。

スキルの向上は結果に影響しなくなる

ここから残酷なロジックを想定することができます。

プレイヤーは努力を積み重ねることで自分の絶対的な実力(skill)を伸ばしていきます。しかし、他のプレイヤーたちの実力も同じように向上している場合にはskillのバラつきは小さくなっていきます。

運(luck)によるバラつきというのはどんな状況でも一定程度は存在するわけですから、結局は結果のバラつきは運によるばらつきに支配される。

つまり、努力してskillを伸ばしても結局はluckで決まるということになってきます。これがスキルのパラドックスの概念です。

Stephen Jay Gouldという生物学者によれば、メジャーリーグでは1941年にTed Williamsが打率0.406を記録して以降、打率4割越えの選手は出てきていないそうです。

最近の選手のほうが過去から学ぶことができるし、最新の科学技術を用いたトレーニングを行うことができるためバッティング技術は確実に上がってきているはずです。

しかし、全ての選手が同様に高いレベルのトレーニングを行っていることからバッターの実力はほぼ均衡しており、運こそが打率を決める決定的な要因になっているのです。

マネー・ボールの世界でも同じことが描かれていましたね。

投資でも同じことが言える

全く同じことがアクティブファンドの世界でも言えます。

インターネットやビッグデータの活用、機械学習による分析力の向上により、世界中のアクティブマネージャーが入手できる情報やアイデアには大きな差がなくなってきています。

こうなってくると結局はその時々の運、つまり相場状況によって成績が左右されることになります。好調なファンドも相場局面が変わると負けやすくなり、継続的に市場を上回ることはとても難しいというのが現実となっています。

実際に、米国の大型株に投資するファンドのリターンのバラつきを計測すると、昔に比べて徐々にバラつきが小さくなっていることを示す研究もあります。似たような成績を示すファンドが多くなってきているということです。

隠れインデックスファンドとなってしまうアクティブファンド

クローゼット・インデックスファンドというのが問題になっています。

クローゼット・インデックスファンドとは、アクティブファンドでありながらインデックスからあまり乖離しないような運用をしているファンドです。

ベンチマークを上回るための十分なリスクを取らず、大きく負けもしないけど勝ちもしないようななんちゃってアクティブファンドのことです。

クローゼット・インデックスファンドが増えてきている理由は、スキルのパラドックスにより良い成績を残すことが難しいことを運用者自身が自覚していることにあるのかもしれません。

どうせ抜群の成績を残すことが無理なのであれば、大きく負けないようにリスクを抑えた方が無難でしょう。成績が悪くなれば投資家に批判されますしクビになるかもしれないからです。

まとめ

スキルを向上させても結果に影響を与えにくい。これは何とも残酷なパラドックスです。

このパラドックスを認識しているがゆえにクローゼット・インデックスファンドが増えてきているのか。それとも、クローゼット・インデックスファンドが増えているからファンドリターンのバラつきが小さくなってきているのか。

この因果関係は分かりませんが、おそらく前者の割合が高いと思います。

投資家としてはクローゼット・インデックスファンドに投資することは避けたいところです。

アクティブファンドであれば、十分なリスクを取っているファンド、ポートフォリオの特性が尖っているファンドなどに投資すべきです。

もしくは最初から低コストのインデックスファンドに投資する方が圧倒的に無駄がないでしょう。

それではまた。