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資産配分におけるリバランス戦略と損益特性をグラフで見てみる
今回はテキストによく出てくる3つのリバランス戦略について紹介します。
これらはテキストの知識としてだけでなく実際の資産運用にも応用できる、もしくは考えの整理になると思います。
簡単のために、株式(リスク資産)と現金(無リスク資産)の2資産アロケーションを考えてみます。
目次
Buy&Hold : リバランスなし
リバランス戦略と言っておきながら最初はリバランスなしのBuy&Hold(買い持ち)です😁最もシンプルなので、ひとつの基準と言うかベンチマーク戦略になります。
買い持ちなので、株式60% : 現金40%の資産配分で投資を始めたらそのまま放置するポートフォリオとなります。
Buy&Hold戦略をとったとき、株の値動きとポートフォリオの資産額とはどのような関係になるか?
以下のような関係となります。
横軸は一定期間経過したときの株価、縦軸はポートフォリオの資産額です。
当たり前ですが、株が上がればそれを60%組み入れているポートフォリオも同じ調子で上がるので右上がりの直線となります。
Constant Mix : 固定ウェイトへリバランス
株式:現金=60%:40%で投資を始めた場合、株が上昇してくるとポートフォリオの中の株式ウェイトは60%よりも高くなってきます。下落した場合は60%より低くなります。
これを60%:40%という固定ウェイトに戻すようにリバランスするのが固定ウェイト戦略です。株が上がれば売って下がれば買い増します。
いわゆる逆張りのトレードですね。
固定ウェイト戦略の損益をグラフ化すると以下となります。上に凸の曲線です。
これを先ほどのBuy&Holdで見た直線と比較してみます。
株価が大きく上がり続けたり下がり続けるような局面(右端や左端のゾーン)では、固定ウェイトリバランス(上に凸の曲線)はBuy&Hold(直線)に負けることが分かります。
逆張り的なリバランスをしているのにトレンドを持った値動きをしているためです。
逆に、一定期間経っても株価が大きく上がりも下がりもしないような局面(横軸で中央付近)、いわゆるボックス相場であれば曲線は上に膨らんでますので直線よりも上側に位置します。つまりBuy&Holdをアウトパフォームします。
逆張りが生きてくるからですね。
CPPI : 最低限の現金を守りながらリスク資産へリバランス
CPPIとはConstant Proportion Portfolio Insuranceの略です。
絶対にこれ以上は損したくない!これだけは守りたい!という金額(=フロア)を設定し、そこからの余剰資金を参考にしながら投資資金を決めたうえで株のようなリスク資産に投資します。
株が上がれば、当初設定したフロアを守るどころか余裕が出てきますから追加で株を買ってリスクを取っていくことができます。一方で、ひとたび株が下がってしまうとフロアを守るためには現金を用意しなくてはならないので、それ以降は株のリスクを取りにくくなります。
したがって、CPPIは順張り的なリバランス戦略となります。
CPPI戦略の損益をグラフ化すると以下となります。下に凸の曲線です。
これはちょうど固定ウェイト戦略と上下さかさまの形状です。
例えば、株価が上がり続ける相場(右端)では上がる度にリスクを追加で取っていくCPPIはウハウハに儲かるのでBuy&Holdをアウトパフォームします。下落が続く局面(左端)では、フロアを守るために株の比率を下げていますから下げの影響が少なく有利です。
反対にボックス相場(横軸の中央)では、株が上がれば買い増し、下がれば売るという順張り的なリバランスは不利に働きBuy&Holdに負けます。
上げでも下げでもトレンドが続けば有利、そうでなければ不利ってことですね。
現実世界への応用
Buy&Holdを基準とするために「中立」として、Buy&Holdに比べて有利か不利かをまとめます。
Buy&Hold | 固定ウェイト | CPPI | |
上昇トレンド | 中立 | 不利 | 有利 |
ボックス圏 | 中立 | 有利 | 不利 |
下落トレンド | 中立 | 不利 | 有利 |
これを現実世界に置き換えてみるとどうでしょうか。
私の場合は積立投資をしたらそのファンドは放置するだけなのでBuy&Holdに近いでしょう。
年に1回とか3か月に1回とか、ズレたウェイトを元に戻すようなリバランスをきっちりやっている人は固定ウェイトリバランス戦略をとっていることになります。
「米国株の調子が良いから」「ハイテク株の調子が良いから」「ひふみ投信の成績がすごいから」という理由でそれらを買い増し、調子が悪くなってきたので一部を現金化した、なんて人はCPPIの戦略に近いことをやっていると言えますね😁
リスクの観点も大事
CPPIはもともと年金基金を想定した戦略なので個人投資家が応用するのは難しいです。最低限の必要資金(フロア)だけに注目し、トレードによってそれを守るというやり方は複雑なリスク管理の仕方になっています。
市場が大きく下落する局面では、CPPI戦略をとっている機関投資家はフロアを守るために株を売却します。そうすると株価が下がるので、またリスクを落とすためにさらに売る、また下がる。こういう負の連鎖が起きてしまうことになり、ブラックマンデーのときなどは批判を浴びた手法です。
固定ウェイトへリバランスする戦略は、リターンの有利不利だけでなく、ポートフォリオのリスクをある程度一定に保つというメリットがあります。株が上がったからと言ってポートフォリオの大部分を株が占めてしまうのは危険だという考えですね。
Buy&Hold戦略はポートフォリオのリスク管理はしないことになります。ただ、ポートフォリオとは別に現金や生活防衛資金を用意している場合であれば、リスク資産のウェイトは敢えて触らない(なぜなら上手なトレードをする自信がないから)というのも合理的と言えるでしょう。税金や手数料の観点では効率的なのは言うまでもありません。
まとめ
伝統的なリバランス戦略を紹介しました。
それぞれのリバランス戦略がどういう相場で有利になり、不利になるのか?リスクの観点ではどれが望ましいのか?
それではまた。