インデックス投資家がフリーライドするもの

こんにちは。YUMAです。

資産運用はもともと投資信託業界ではなく、投資顧問業界でスタンダードが作られてきたものです。

最近になって、低コストの商品ラインナップの拡大、フィデューシャリー・デューティの徹底といった事柄を背景に、個人投資家にもレベルの高い運用商品が提供されるようになりました。

受けられる恩恵と共にインデックス投資家はあくまでフリーライダーであるという謙虚さを持つべきだとも思い記事を書きます。

かつて運用業界において個人投資家向けビジネスはチョロかった

かつて、資産運用業界では投資顧問(機関投資家≒年金運用)こそが本流ビジネスとされ、投資信託(個人投資家向け)はややチャラいビジネスだという風潮がありました。少し前までの話です。

年金運用はアセットオーナー側も洗練されたプロであり、国内外の運用会社は実力とコストの両面で徹底的に横比較されるし、年金基金側も海外の年金基金とも比較されたりするので全てのレベルが高くマジガチの実力勝負なのです。

一方で、個人向けの投資信託と言えば分配金を頻繁に出したり流行りのテーマの投信を立てれば手数料がどんだけ高くても飛びつく人もいたし、証券会社のセールスが自分の成績のために売り込むので一気にお金が集まってきました。これは売り手の問題が大きいですが買い手のリテラシーの低さも一因です。

これらを揶揄して年金ビジネスに従事している専門家には、投信ビジネスはしょせん水商売だと言う人もいました。

無論、これは少し前までの話で、今はフィデューシャリー・デューティの促進が叫ばれてますし世代交代も進んでいるので、そんな考えを持つ人は少なくなっていると思います。

通常のフリーライダーとは株価形成の話

話は変わりますが、普通はフリーライダーと言うと、、

市場のミスプライスを探して是正するのはアクティブ運用であり、その結果として効率的市場が成り立つならインデックス運用が低コストだし最適だ!

という考えで、あくまでアクティブ運用の努力を前提としてタダ乗りするのでフリーライダーだということです。

これは全く悪いことでもないし、欲をかいてる訳でもない。歴史と理論を理解していればこその英断です。

ただ、フリーライドしているからにはどれだけ投資成果が優れていようともアクティブ運用やその他の運用スタイルをバカにすることは許されませんし、むしろリスペクトすべきです。

年金ビジネスで溜めたノウハウにもフリーライドしていると言える

フリーライドは市場の効率性の観点だけではありません。

先述したように、資産運用業界とりわけインデックス運用は年金運用とともに発展してきました。それらの発展過程で、如何にコストをかけずに運用・トレードするか、商品設計をするか、カストディアンとの関係を構築するか、、といったノウハウが蓄積されてきました。

一昔前から年金運用業界では投信とは比べ物にならないほど低い報酬率で運用を受託してきました。これは競争の激しい業界ならではのことで年金ビジネスはあまり儲からないというのが業界の常識です。

最近になって個人投資家向けに超格安インデックスファンドが提供されるようになったことは一人の投資家として大変嬉しいのですが、これは運用会社各社がこれまでに培ってきたノウハウがあるからできたことです。

裏で巨額の年金運用を同時に運用しているからこそのスケールメリットもあります。年金ビジネスに弱い運用会社においても、系列の受託銀行はノウハウを溜めてきたし、年金ビジネスでスキルを磨いた人を引っ張ることでオペレーションを充実させてきました。

つまり、個人のインデックス投資家は、運用会社にとっては儲からない年金運用ビジネスで揉まれてきたノウハウやスケールメリットにもフリーライドしていると言えるのです。

スチュワードシップにもフリーライドするか

年金運用業界では、議決権行使に代表されるスチュワードシップの強化やESG投資への流れも盛んです。

年金業界はスチュワードシップ活動やESG投資にも積極的に取り組んでいます。GPIF自らもまた日本株式市場を少しでも良くしようとこのような活動に力を入れています。

年金基金が運用会社へのフィーを叩くのは自由競争の結果なので自然なことです。しかし、一方で株式市場の発展に資する活動も積極的に行っていることを忘れてはいけません。

この状態では、個人のインデックス投資家は年金業界のスチュワードシップ活動にもフリーライドすることになってしまってます。

もちろん、投資信託という性質上、個人投資家は議決権行使に影響を与えたくともできないわけですが、日産のような問題が起きると責任を持ってスチュワードシップとして改善の仕組みを考えるのは個人投資家を除くステークホルダー(アセットオーナーや運用会社や当局)なのです。

まとめ

超格安インデックスファンドの台頭により、年金基金をはじめとした機関投資家と個人投資家の支払う報酬率の差がなくなってきました。

年金業界だけが議決権行使などの地道なスチュワードシップ活動に取り組むのには限界が来るのではないでしょうか。本気でスチュワードシップ活動に力を入れる運用会社はフィー競争を続けられないのではとも思います。

万が一、とあるファンドでフィーが上がってしまう事態が起きてもその時点で最安のファンドに乗り換えるだけなのでしょうが、私たち個人投資家もまたフリーライダーである自覚と謙虚さを持つことは大切だと思い、自戒を込めて記事を書いています。

それではまた。