【入門編】株式投資のファクター・リスクプレミアムってなんだ?

こんにちは。YUMAです。

株式投資におけるファクターとは何か?

その起源は最もシンプルなシングルファクターモデル(CAPM)で出現する市場ファクターであり、市場ファクターへの感応度(=振り回されるリスク)をβで表したのでした。以下参照。

では、CAPMの市場ファクター以外に代表的なファクターとはどんなものがあるでしょうか?

それらにもまたリスクプレミアムはもたらされるでしょうか?

市場ファクターのプレミアム

CAPMによれば、市場ファクターへの感応度(リスク)であるβが高い銘柄ほど高いリスクプレミアムが期待されます。

リスクを度外視すれば、高いβを持つ銘柄は高い期待リターンを有するのです。

市場の値動きに大きく振り回される銘柄はリスクが高く、皆が嫌がる銘柄ですからそれらは低くプライシングされるているわけですね。βが低い銘柄はその逆です。あくまでCAPMの想定する世界の話ですが。

市場ファクター以外の代表的なファクターは何でしょうか?

サイズファクターのプレミアム

市場ファクター以外で有名なファクターとしてサイズファクターがあります。

サイズファクターとは「小型株ファクター」とも言われるもので、株式市場に上場する銘柄の中で時価総額の小さい銘柄は大きい銘柄に比べてリスクが高いという前提に依拠しています。

市場全体を小型株と大型株に2分割し、小型株ポートフォリオ(Small)と大型株ポートフォリオ(Large)のリターン差(Small – Large)を考えます。リターン差なのでSmall – Largeは、小型株ロング・大型株ショートのロングショート戦略のリターンとなっています。

Small – Largeのリターンへの感応度が高い銘柄、影響を受けやすい銘柄は期待リターンが高く、サイズファクターへのリスクプレミアムが存在することが実証研究で示されてきました。

Small – Largeへの感応度が高いということは、小型株がアウトパーフォームするときに同じようにアウトパフォームし、逆も然りということ。なので、感応度が高いイコール小型株そのものと言えます。

つまり、小型株は大型株よりも様々なリスクが高いので、そのリスクの分だけアンダープライシングされ、期待リターンが高いとされているのです。

なぜ、小型株の方が大型株よりもリスクが高いのでしょうか?

それは大型株に比べて投資家の入手できる情報が少なかったり、倒産リスクが高かったりするからと考えられています。

しかし、昔ならいざ知らず、今は株式市場の上場基準もしっかりしていますし、ネット社会なので情報も手に入りやすい。昔ほどの小型株のアンダープライシングはないと考えられます。

実際、「小型株効果(アノマリー)」が最初に発表されたのはBanz[1981]ですが、その後は徐々に小型株のアウトパフォームは市場によらず見られなくなってしまい、現在ではサイズプレミアムは「消えたプレミアム」と評価されています。

バリューファクターのプレミアム

バリューとは割安という意味です。

バリュー株が超長期でアウトパフォームすることはよく知られています(ここ数年は劣後が続いていますが)

何をもって割安というかは様々な研究があるのですが、ファクターとしてはBook-to-Market(B/P = PBRの逆数)が一番メジャーです。つまり、PBRが低い銘柄を割安と捉えてバリュー株と呼ぶことが多いです。

サイズファクターと同様の手順で、、、B/Pの高い(PBRが低い)バリュー株をロングしてB/Pの低い(PBRが高い)非バリュー株をショートするようなロングショート戦略のリターンを考え、これへの感応度が高い銘柄はバリューファクターへのリスクが高いとされます。感応度が高い銘柄というのはまさにバリュー株ですね。このような銘柄はバリューファクターへのリスクプレミアムが存在することから、期待リターンが高くなると説明されています。

なぜ、バリューファクターにリスクプレミアムがあるのか?

株式市場の大幅下落時には往々にしてバリュー株は劣後します。ボロ株という言葉があるように、そもそも割安に放置される銘柄には理由があるとも言えます。倒産リスクなども関係してくるでしょう。

このようなリスクを積極的に取っている投資家は、市場下落時にはより大きく負けてしまうかもしれませんが、その後のリバウンドでは大きく取り返すことが多く、長期で見れば市場平均をアウトパフォームすることが報告されています。

しかも、バリューファクターのプレミアムはサイズファクターと異なり、Basu[1977]の研究発表後も消えることがなく長らく効果が継続してきたファクタープレミアムです。しかしながら、ここ数年程度、米国ハイテク株の好調などを背景にバリューファクターは苦戦が長引いています。

ファクター投資で市場平均をアウトパフォームできるか

「市場が効率的であるならば何人も市場平均を上回るリターンをあげることはできない」とよく言われますね。(私のイメージする効率的市場についてはこちらをどうぞ↓)

ただ、もしも幾つかのファクターにリスクプレミアムがあるのならばファクターを意識した投資を行うことで市場を上回るリターン、すなわち追加的なリスクプレミアムを享受できるかもしれません。

しかしながら、数あるファクターの中で確からしくプレミアムを有するものは稀有です。それどころかそのようなファクターリスクプレミアムが本当に存在するのかどうかさえ、無数の実証結果は報告されているものの確実とは言えません。

このような背景から、私は「そのファクターにプレミアムがあるかどうか」をアクティブマネージャーが判断し、顧客にプロダクトとして提供することも重要ですが、それ以上に投資を実行する投資家自身がプレミアムの背景にあるロジックや、将来も継続するプラミアムなのかをある程度は考えを持っておくべきだと考えています。

このあたりの考えや別の機会に。また個々のファクターについては、今後少しずつ紹介していきます。

それではまた。