MSCIのTotalReturnの配当再投資タイミングはTOPIX配当込み指数とは1日ズレている(後編)

こんにちは。YUMAです。

前回の続きです。

リターン式から見える配当再投資のタイミングの差異

MSCIの配当込みリターンの定義を理解したところでTOPIX配当込みリターンの定義と比較してみます。

簡単に言えば当日tの日次リターンは、$$\frac{当日終値}{前日終値}-1$$ですよね。

MSCIは分子で調整

MSCIの日次配当(グロス)リターンの定義式は以下の通りでした。

分母⇒前日終値時価総額
分子⇒t日終値時価総額+配当インパクト

t日に配当落ちが起きた場合の分子がポイントです。

終値時価総額からは配当分が落ちていますが、配当インパクトとして配当分を足し込んで調整しています。

これはつまり、配当落ち日の終わり時点で配当を還元しているということです。

TOPIXは分母で調整

これに対して前の記事のTOPIX配当込みリターンの定義式を見てみましょう。

リターンの計算式は以下の通りでした。

$$配当落ち日のTOPIX配当込みリターン$$ $$=\frac{当日の終値時価総額(配当落ちてる)}{前日の終値時価総額-予想配当落ち金額}$$

TOPIX配当込みリターンでは、配当落ち分の調整を分母に対して、つまり前日の終値から引くことによって行います。

再投資タイミングは1日ズレている

MSCIのTotal ReturnとTOPIX配当込みリターンでは配当落ち分の調整を、分子(=当日終値)に対して行うか、分母(=前日終値)に対して行うかの違いがあるのです。

言い換えれば、再投資タイミングが、配当落ち日の引け時点(MSCI)か配当権利確定日の引け時点(TOPIX)かという違いです。

具体的にはどういう意味を持つのでしょうか?

配当落ち日tの株価変動を配当分に作用させているかどうかの違いがあります。

TOPIXの場合は、配当落ち前日の引けで配当を再投資しているので、そこから翌日の配当落ち日へのオーバーナイトの株価変動と、落ち日の朝から引けまでの株価変動が配当分に対して影響します。配当が権利確定した直後に株価変動にさらされるのです。

MSCIの場合は、配当落ち日の引けで配当を再投資するので、配当落ち日tのリターンが高かろうが低かろうが配当分はt日の株価変動の影響を受けません。

両者には配当分にt日のリターンがかかるかどうかの差が生まれるのです。

直感的には、配当の権利が確定するのは権利確定日の引けで株を保有していたかどうかですから、TOPIXの計算定義のほうがしっくりくるような気もします。

しかし、その場合、配当権利が確定するタイミングと同時に再投資を行うので、それはそれで前倒し過ぎなのではという気がする人もいるでしょう。

インデックスファンドのマネージャーはどう動くか?

インデックスファンドを運用しているマネージャーはトラッキングエラーを小さくするためにどんな行動を取るでしょうか?

答えは簡単。

未収配当金は使えない現金、つまり使えるお金がないのにも関わらず、配当落ち分をそのタイミングで再投資する必要があります。

そこで、株式先物を買い建てます。

TOPIX連動運用であれば権利確定日の引けt-1で、MSCI Japan連動運用であれば権利落ち日tの引けで先物を配当落ち分だけ買います。

この辺りの事情がわからなければこちらの記事をご覧ください。

基本的に国内のパッシブ運用者は権利確定日t-1の引けでガッツリTOPIX先物を買いに来るので出来高は大きくなりやすいです。

MSCI Japan連動、これにはMSCI World IndexやMSCI ACWI IndexやMSCI EAFE Index に連動するグローバルなインデックスファンドの日本株部分も含まれますが、彼らは1日遅れて配当落ち日tの引けでTOPIX先物を買いに来ると考えられます。銘柄数が近い日経225の先物を買うマネージャーもいるでしょう。

ただ、そもそも外国人のインデックス運用は日本人ほどきめ細やかにマネジメントされてないことが多いのでこの辺りはテキトーかもしれません。

まとめ

2回にわたり株式インデックスの配当落ちに伴う再投資タイミングについて考察してきました。

ざっくり言うと、国内勢がまず権利確定日に先物を買い付け、その後に海外勢が1日遅れて先物を買い付けます。先物の出来高も大きくなります。

だからと言ってなんだというわけではありませんが、そんな事情で世のパッシブマネージャーは動いています。

それではまた。