【昇格とボーナス】優秀な従業員にはボーナスだけでなく昇格でも報いるべき

こんにちは。YUMAです。

従業員の間にボーナス格差を大きくつけた方が良いのか?を考えるとき、トーナメント理論によれば、格差が大きいほど従業員は努力をしてより高いボーナスを勝ち取ろうと努めます。

無論、ある条件下では例外となることも指摘されています。

このあたりは過去の投稿をご覧ください↓

そこで今回は、社員の働きに報いるボーナスとは別のチャンネル、すなわち「昇進・昇格」が持つ意味とメリットについて考察します。

長期雇用と昇格制度

終身雇用という世界にも稀な仕組みを頑なに守り続ける、それがこれまでの日本企業でした。しかし、最近はそのような習慣も徐々に崩れてきていますね。少子高齢化と競争激化によって企業が社員の面倒を定年まで確実に見続けるというのはもはや事実上不可能です。

ところで、長期雇用と昇格制度は相性が良かったと言えます。

長期雇用、とりわけ終身雇用が前提とされていれば、若手社員は当初はしんどくても将来の昇格が見えているので、それを目指して頑張れるからです。

逆に言うと、企業側は当初は安い賃金で雇うことができ、細かい昇格を少しずつ与えることで育て上げた社員に忠誠心を植え付けることもできます。ある程度の昇格が見えている社員としては「せっかくここまで頑張ったんだから」と転職を見送ることもあるでしょう。

これらは、社員の貢献に対してボーナスだけで対応していたのでは得られない効果です。

昇格というツールのメリット

評価期間

ボーナスと昇格の違いとして評価期間があることは既に触れました。1年といった短い評価はボーナスに反映させることができますが、より長期の評価をボーナスに反映させることはできません。

長期では複数回の評価が影響し続けるため、固定的なボーナスとなり、直近の功績をビビッドに反映できなくなってしまうからです。

短期の目標だけでなく、より長期の基礎的な能力の向上に対しては昇格で報いる方が向いています。

可視性

ボーナスの場合、誰が多くもらったかを知ることは難しいという特徴があります。自分のボーナスが相対的に良いのか悪いのかは上司からのフィードバックでおおよそ知ることはできますが、「○○部の△△さんがトップのボーナスを貰ったらしい」なんてことは通常分かりません。

昇格であれば、特定の従業員が高く評価されていることを全員に見える形で示せます。これによって、しっかりとした功績があれば上司や経営陣から高く評価されるということを認識できるのです。

もし、ここが不透明だと「どうせ功績を出しても評価されない」と認識され、従業員の努力のモチベーションを削ぐことになります。

モチベーション

これも長期雇用と関連しますが、ボーナスだと一発ドカンと還元できるのに対して、昇格の場合は小刻みに評価を上げていくことができます。

例えば、優秀な社員が優秀な功績を出したときに、その全てをボーナスで報いるのではなく昇格も使います。一度にボーナスをたくさん出してしまうと、次期の功績がそれを上回らないとボーナスを前期比でアップさせることができません。

こういうときに昇格というツールを用いれば、少しずつ職位の階段を上げてやることで給与の前期比アップを小幅ながら長く続けることが可能となります。

すると、やはり前期比アップという点でそこそこの満足感を与えられ続け、かつ将来の昇格ペースもイメージできるため従業員のモチベーションや忠誠心を育むことに繋がります。

日本企業は外資系企業に比べて職位の階層が多いと言われています。これは、長期雇用のカルチャーをうまく活用するため、(一見ムダかもしれない)小刻みな昇格を与えられるようにした制度設計と言えます。

昇格していくほど給料の上昇幅は大きい

最も職位階層が下である新入社員が次の職位に昇格する確率(割合)と、課長が部長に昇格する確率、または部長が役員に昇格する確率を比較してみましょう。

基本的には下の職位の昇格よりも上の職位の昇格の方が圧倒的に給与の増加幅は高くなります。

これは、昇格する確率(割合)を難易度としたとき、高位な職位の昇格ほど確率が低い、すなわち難しいからです。

職位が上がるほど競争はより厳しくなるため、そこでもなお努力をして競争に勝とうとするためには低い職位での競争よりも多くのインセンティブを与える必要があるとされています。したがって、競争の勝者にはより多くの賞金、すなわち高い賃金が用意されるのです。

また、これにより下の職位の従業員にとってはさらに上の職位を目指そうというモチベーションを高めることにも繋がります。

昇格を重視する企業が陥る罠

昇格をすると何らかの新しい仕事と肩書きを与えることが通常です。

これまでは技術的もしくは専門的な業務をしていたのに、昇格していくとマネジメント的な業務もこなさないとならないこともあるでしょう。

このように優秀な社員を昇格させていくと、業務内容や求められるスキルが変わっていくため、必ずしも適材適所にならない可能性があります。

優秀な人材は昇格し続けますが、いつか自分の適正と外れた業務を任されたときに必ず昇格ペースが止まります。つまり、昇格させなければ顕在化しなかった能力不足が露呈します。

逆に言えば、上司や経営陣は優秀な人材が能力不足を露呈するまで昇格をさせ続けてしまうのです。

本来は、専門職とマネジメント職という形で分割されたキャリア形成をしていけば良いわけですが、総合職として一括採用し、幅広な業務を任せたい日系企業ではこのような問題が起こりやすいと言えます。

それではまた。