ボーナス格差は大きくなるべき?トーナメント理論から導かれる答とは?

こんにちは。YUMAです。

次のボーナスを貰う季節までにはまだ少し時間がありますね。前回の冬のボーナスの時期には↓のような話題が盛り上がっていました。

会社や業界によってボーナスにばらつきが出るのは仕方ないわけですが、同じ会社に同じ年次に入社してもその後の給料やボーナスには当然差がついてくるものです。

当然ながら上司は部下である従業員の功績や貢献度合いを評価しながらボーナスをつけていくわけですが、この従業員の間の「ボーナス格差」って大きい方が良いのでしょうか?

外資系に比べると日系企業は格差が小さいと言われますよね。

今回はトーナメント理論を簡単に紹介しつつ、このボーナス格差やインセンティブの付け方について考えます。

絶対評価と相対評価

あなたのボーナスはどちらで決められるべきでしょうか?

会社にいくらの貢献をしたか?利益を何円生み出したか?このような情報を元に評価されるのならばそれは絶対評価と言えます。完全出来高払いの営業マンであればこのような仕組みもあり得るでしょう。

しかし、実際にはどうでしょうか?

個々の従業員が産み出した利益や貢献度合いを、評価者である上司が正確に把握することはなかなかできませんよね。

研究開発のような長期成果を目指す業務とか、財務部や人事部のような本社機能を担う業務は必要不可欠ですがなかなか売上を生みません。

また、景気そのものが悪くなればどんな優秀な営業マンでも成績は悪くなるし、環境変化といった不可抗力が評価に影響してしまうのはよろしくありません。

したがって、多くの場合には絶対評価は用いられず相対評価をされることになります。あなたの貢献は周囲の従業員と比べて優れていたか劣っていたかが重要なのです。

相対評価ならば個々の従業員が厳密にどれだけの利益を稼いだかを把握する必要はありません。

特定の評価尺度を用いて全員を同じ土俵で評価すれば良いのです。また、景気や環境変化の要因は全員に共通なのでフェアな評価ができます。

大学入試は成績上位○○人を合格、とするわけですがこれは典型的な相対評価ですね。

なかなか絶対評価というのは難しいわけです。

トーナメント理論とは

相対評価の中で代表される評価体系の理論にトーナメント理論というものがあります。

トーナメント理論は人事経済学や労働経済学と言われる分野で歴史を持つ理論で、今でもそれらをベースに実証研究が行われています。

トーナメント理論を簡単に説明すると、winner-takes-allの世界観です。

トーナメント理論では、各従業員は経営者から支払われるボーナス(スポーツで言うところの賞金と同じ)を得るために努力(=自己投資)をして成果を競うことを想定しています。

このとき、従業員同士の競争の勝者と敗者にどれだけのボーナス格差をつければ全体としての成果が最大化されるか?というインセンティブ体系を理論化したものがトーナメント理論です。

勝者と敗者は従業員の相対評価で決められます。つまり、スポーツと同様で「勝者なし」ということはなく、相対的に評価の高い誰かが必ず事前に提示されたボーナスをゲットします。

トーナメント理論によれば、基本的には勝者と敗者に与えられるボーナスの格差が大きければ大きいほど、それぞれの従業員はより多くの努力をすることで競争を激化させます。

各従業員はwinner takes all のシビアな世界に対応し、必死に高いボーナスを求めるのです。そしてそれが会社としての利益をも最大化させることになるため望ましいのです。

しかし、様々な条件を変えていくと、必ずしもボーナス格差が大きくなるほど良い結果を導かないことも分かっています。

相対評価のデメリット

トーナメント理論だけに限らず、そもそも相対評価には欠点があります。

まず考えられるのは賄賂です。

賄賂

絶対評価であれば従業員は自分の業績が明確に分かるため、その評価に対応するボーナスもある程度はっきり推定できるでしょう。相対評価の場合、自分以外の全ての人の業績と相対的な順位が影響するため、見えない部分、不確実な部分が大きくなります。

すると、自分の評価者である上司に賄賂を渡すことで自分の評価を上げてもらうという選択肢が生まれます。

従業員からすれば賄賂を渡すことである程度の高いボーナスが確約されるならば、少しくらいの賄賂は総合的に得になります。また、上司からしても「どうせ相対評価ならば個々の従業員が自分の相対順位を正確に分かってないんだから」という気持ちになり、賄賂を受け取る誘惑に負けるかもしれません。

そう、相対評価は正確な順位や評価が見えにくいため、それを悪用することがあり得るのです。

ライバルの足を引っ張る

こんな可能性もありますよね。絶対的な評価ではなく相対的な順位のみが重要なのであれば、自分も努力はするけれどライバルの邪魔をすれば自分の勝つ可能性は高まります。

賄賂を渡したりライバルの足を引っ張ることはスポーツの世界では古くから行われてきたことです。

相対評価にはスポーツで見られるのと同じ問題があります。

ボーナス格差をつけないほうが良い場合

先ほどのトーナメント理論の研究では、基本的には格差が大きければ大きいほど良いとされましたが例外的なケースもあります。

それは、従業員の能力が必ずしも先天的に同じでないことが関係しています。つまり、これからお互いに競争し合う従業員に歴然とした能力の差があり、それを互いに知っている場合です。

能力に大きな差がある場合、能力のない従業員はちょっとやそっとの努力では勝ち目がないことを悟るため、敗者としての低いボーナスを甘んじて受け入れ、努力というコストを節約する可能性があります。

また、能力ある従業員もまた必死に努力しなくても勝てそうだということを悟り、そこそこの努力しかしない可能性があります。

このように、ボーナス格差をつけすぎることにより従業員同士の競争を弱めるケースもあるのです。

このような場合には、経営者や上司は適切なハンデを課したり、評価ポイントを一部変えたりと何らかの工夫をする必要が出てきます。

長期雇用とボーナス格差は相性が悪い?

ここまでトーナメント理論をもとに説明してきた話は全て単一期間のゲームを前提にしています。

実際には、努力→競争→評価→ボーナス支払い、という流れが何度も繰り返されるのが企業ですよね。

多期間を考えるとき、1回ごとのゲームを最適化するような単一期間の競争を繰り返すことは従業員を消耗させたり、従業員と経営者との良好な関係構築を妨げるかもしれません。

特に、短期の成果を求めたり従業員の出入りが激しい外資系企業ならいざ知らず、日系企業のように終身雇用を前提としている場合はなおさらボーナス格差を過度に大きくすることは最適とならないでしょう。

長期の雇用を前提とする場合、毎回のボーナス格差の問題だけでなく、社内での「昇進」というツールをうまく使うことが重要とされています。

その辺りはまた続きの考察を投稿したいと思います。
↓続きです。

それではまた。