日本の所得代替率は高いのか?国際比較で見えてくるもの

こんにちは。YUMAです。

老後2000万円が炎上してからというもの、年金についての関心が高まっていますね。

この中で所得代替率という言葉がちょいちょい出てきます。

所得代替率ってなに?日本の所得代替率は高いの?低いの?

所得代替率とは

厚生労働省のサイトに漫画で分かりやすく解説されてます。

所得代替率」とは、年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合か、を示すものです。 たとえば、所得代替率50%といった場合は、そのときの現役世代の手取り収入の50%を年金として受け取れるということになります。

よく「年金はいくらもらえるのか?」というフレーズを聞きますね。勿論、年金の金額は大事なのですが、絶対的な金額だけでなく相対的な価値を考えることも大事です。

なぜなら、年金を受けとるのは将来の話なのでお金の相対的な価値が変わっているかもしれないからです。また、年金で生活していくのに重要なのは金額よりも年金で賄える生活力や購買力です。

つまり、日本の平均的な物価や賃金が変化すれば年金額も変化するし、金額だけではなく現役世代の所得に比べてどれくらい貰えるかという相対的な尺度を考えようということで所得代替率が注目されるのです。

日本の所得代替率はいくら?

5年に一度行われる財政検証の時に将来の年金額や所得代替率が大まかに推定されます。前回の平成26年に公表された見通しを見てみましょう。

将来のことを推定するためには経済環境なども合わせて予測する必要がありますが、あまりに不確実な要素が多くあり正確に予測することは不可能です。したがって、「こういうケースであれば所得代替率xx%」といった形で複数のパターンが公表されています。

詳しくはやはり厚生労働省のサイトをご覧ください。平成26年度の所得代替率は62.7%と記載されています。

将来の見積もりはどうでしょうか?

様々な仮定のもとで計算された数値だということは認識しておくべきですが、多くのケースで2043~2044年に所得代替率は50%前後になると見積もられています。この50%というのが1つの目安です。

想定ケースではマクロ経済スライドによる年金額調整も考慮されています。その際に、

次の財政検証までに所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には、「調整期間の終了について検討を行い、その結果に基づいて調整期間の終了その他の措置を講ずる」こととされています

とあり、所得代替率が50%を下回る場合には何らかの対応を検討しようという姿勢が示されています。

平成26年の推定時点では5年以内に所得代替率が50%を割ることが想定されなかったためにガッツリと議論されていません(議論先送り)でしたが、今年の財政検証でどこまで議論されるのかが注目されます。

日本の所得代替率は高いの?低いの?

将来の日本の所得代替率が下がっていくとしても、50%を割り込むかどうかというのが1つの節目とされており、重要な数字だということが分かりました。

そもそもこの基準、50%って高いのでしょうか?低いのでしょうか?

国際比較することで大まかなイメージが持てるかもしれません。

厚生労働省が「諸外国の年金制度の動向について」というタイトルのレポート(pdf が開きます)を公開しています。

このレポートの6ページ目に、OECDの推定した諸外国の将来の所得代替率が記載されています。

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日本の推定値は2061年予想。マクロ経済スライドが考慮されています。

ただし、

OECDによる所得代替率の比較は機械的な試算であり、制度の持続可能性を維持するための各国の工夫等は説明されていないため、単純に各国の年金制度を比較することは難しい点に留意が必要。

と記載のある通り、各国をフェアに横比較できるものではないため、あくまで参考として捉えるにとどめた方が良さそうです。また、日本の場合は税金や社会保険料を控除するか否かで厚生労働省の所得代替率の定義と若干異なっています。

その前提で各国の所得代替率を眺めてみます。

日本は34.6%と推定されています。50%を大きく割っていますね。

本来は50%を割り込む過程には様々な議論もあるかと思いますが、ここでは一旦受け入れて他国を見てみましょう。

一番高いのはイタリアで83.1%です。マジかよって感じですね。

ただし、注意しなくてはならないのはイタリアは保険料も圧倒的に高いということ。特に、労使の「使」の割合がべらぼうに高いです。現役時代の保険料負担が大きい代わりに老後の面倒も手厚く見てくれるという構図ですね。フランスも似ています。

公的年金の所得代替率が最も低いのはデンマークで14.8%です。

しかし、よく見ると「義務的な私的年金」というのが71.6%もあります。

これは公的年金だけではなくて企業年金(DBやDC)などの私的年金のサポートが手厚いためにトータルで見た所得代替率が高いことを示しています。オランダやスウェーデンも似た構図ですね。

日本と近い所得代替率なのはアメリカ(38.3%)やドイツ(38.2%)と言えそうです。保険料率の水準も労使折半で一桁後半パーセントとなっています。

まとめ

こうして各国の所得代替率を眺めてみると、突出して高い国はありますが、その背景には高い保険料があります。

一方で、この中では日本は低いように見えますがアメリカやドイツと概ね同水準であり、そういう意味では突出して低い国はないように見えます。

日本の所得代替率は低いか?と聞かれれば、高くはないけど超低い訳ではないという何ともモヤモヤした回答になります。

また、公的年金に大きく頼る国があるのに対して、私的年金が補完することでトータルの所得代替率を高く保つ国があります。

この辺りはとても興味深いので別の記事でさらに掘り下げたいと思います。

それではまた。