国の経済成長率と株式市場のリターンは関係ない

こんにちは。YUMAです。

ある国の経済成長と株式市場のリターンは関係あるのか?よく問われるネタです。先日のインデックス投資ナイト2018でも軽い議論がありました。

高い経済成長が見込めそうな国は、それより前に株式が上がってしまっていて結局割高になっているために期待リターンはかえって低くなる、といったロジックが真しやかに語られます。

それって本当なのでしょうか?

紹介文献

同じテーマの研究は無数にあるとは思うのですが今回はこちらの文献を見てみましょう。

Is Economic Growth Good for Investors?

Jay R. Ritter, University of Florida [2012]

このペーパーの中では最初に経済成長と株価リターンの関係を分析したのは 、Jeremy Siegel (ジェレミー・シーゲル氏)の書籍の中であると述べられています。

そのうえで、今回はグラフが見やすいという理由でこちらの文献を選んでいます。

分析結果の紹介

過去112年間のGDP成長率と株式リターンを並べる

早速メインの結果を見てみましょう!

棒グラフのグレーが実質GDP成長率、紫が実質株式リターンをあらわしていて、左から株式リターン(紫)の低い順に国別に並んでいます。

「実質」の意味はインフレ控除後のこと。各国のインフレ率の違いを調整するためにGDP成長率と株式リターンからインフレ率を控除しています。

どちらも現地通貨建て、年率換算で計算されています。株式リターンは株価変化率だけでなく配当が含まれています。計算に使ったサンプルは1900~2011年の112年分のデータです。

グラフをよく見てみましょう。

  • この112年間で最も株式リターン(インフレ控除後)が低かった国(グラフ左側)はイタリア(Ital)で次に低いのはベルギー(Bel)
  • 最も株式リターンが高かった国(グラフ右側)はオーストラリア(Aus)で次に高かったのが南アフリカ(S Af)
  • 実質GDP成長率が最も高かったのは、なんと日本(Jap)
  • 実質GDP成長率が最低だったのは南アフリカ(S Af)

112年のデータで見ると大きな戦争(とその被害)を経験しているヨーロッパの国が株式リターンが相対的に低く左側に多いですね。インフレ率が高い時期を経験したせいもあるかもしれません。

一方で、112年間で株式リターンの高かった国々、つまりグラフの右側に位置する国々というのは、オーストラリア、南アフリカ、アメリカ、、と並んでいて、アングロサクソン系、英語圏、資源国が多い印象ですね。スイスはヨーロッパに位置しながら例外的に高い株式リターン(第4位)を示しています。これはやはり大戦を免れてきた歴史が関係しているのでしょう。

関係してるか?

さて、いかがでしょうか?

実質GDP成長率と株式リターンは関係してそうでしょうか?

全然関係なさそうに見えますよね。

このグラフを数値で表示したのが以下の表になります。

左の列から、「国名」「実質GDP成長率」「株式リターン(現地通貨建て)」「株式リターン(米ドル建て)」です。

下から2段目にあるのが、実質GDP成長率と株式リターンの相関係数(correlation)です。現地通貨リターンで-0.39、米ドル建てリターンで-0.31とありますから、成長率と株式リターンは関係ないどころかむしろ逆相関ということになります。

新興国でも結果を見てみる

新興国でも同じようにグラフがあるので見てみましょう。

先ほどとグラフの色がなぜか逆なのはご愛敬w

グレーが実質株式リターンで紫が実質GDP成長率です。

  • 株式リターンの低い国(左側)はロシア、次いで中国、ポルトガル(マイナスリターンです)
  • 株式リターンの高い国(右側)はメキシコ、次いでチリ、ブラジル
  • GDP成長率が高かったのはダントツで中国、次いでインド

南米の国が株式リターンが高かったようですね。どうも長期の株式リターンはアメリカとの物理的距離、政治的距離が関係しているのかもしれません(真剣)。

中国、インドの経済成長率が高かったのは周知の事実ですね。人口ボーナスという言葉も使われるようになりました。

さて、経済成長率と株式リターンに関係は??

ないですよね。。。どう見ても。

まとめ

今回のペーパーでは、各国ごとに長期の経済成長率と株式リターンを計算し並べたところ、両社に関係はない、むしろ逆の関係だと結論付けています。これだけのサンプルで逆相関と結論付けるのは少々厳しいと思いますが、無関係だというのは間違いない結果でしょう。

今回の分析は、GDP成長率と株式リターンを各国間で比較しました。これはクロスセクション(横断的な)比較です。したがって、ある一国を歴史的に見て経済成長の高い時期は株式リターンはxxだった、というようなタイムシリーズ(時系列的な)分析ではないことに注意が必要です。

ただし、そのうえで理論的には、経済成長を決定づけるのは、労働力の投入量(capital input)と資本の投入量(labor input)と技術革新の3つであり、これらは各企業の集合としてではなく、国の政策に依存する部分が大きいです。

つまり、株式リターンと経済成長をつなげるには理論的にそもそも無理があるのです。

また、経済成長の恩恵を受けるのは「消費者」「労働者」であり、株式リターンの恩恵を受けるのは「投資家」です。

彼ら3者の間に利益相反があるように、3者が同じように満足する利益を得ることは実は難しいのかもしれませんね。

このあたりは分析すると面白そうです。

それではまた。