ファンドマネージャーに副業が解禁されたら?

こんにちは。YUMAです。

最近は副業解禁に関するニュースが多いですね。

色々なメリットとデメリットがありますが、運用会社で副業が解禁になったという例はまだ聞きません。

大手運用会社に勤める私のようなファンドマネージャーに副業が解禁される日は来るのでしょうか?考えてみました。

副業のメリット/デメリット

まずは改めて副業が解禁されることの影響を整理します。

メリット

  • 副業をする社員の収入が増える
  • 本業以外のスキルアップや情報収集に繋がる
  • 外部とのネットワーク構築になる

デメリット

  • 企業の機密情報流出につながるリスク
  • 優秀な人材流出につながるリスク
  • 人事側は社員の労働時間や健康状態など労務管理が難しくなる

社員側と企業側の双方にとってメリットとデメリットがありますね。ただ、どちらかというと社員側にメリットが多く、企業側にはリスクが多いでしょうか。

情報管理とインサイダー情報の取り扱い

ファンドマネージャーに当てはめて考えてみましょう。情報管理はかなり重要です。

運用会社として投資家の顧客情報を持っているので、これを外部に流出させることがあってはなりません。また、当然ながら運用会社に限った話ではありませんが自社の情報管理も徹底する必要があります。

ファンドマネージャー特有の注意点は、副業をする過程で得たインサイダー情報の取り扱いです。通常、銘柄調査の中でインサイダー情報を知った場合、そのことをCCO(チーフコンプライアンスオフィサー)などしかるべき責任者のみに伝え、それ以外に不必要に伝達をすることなく、自らはインサイダー情報を利用したトレードを行ってはならない、という決まりがあります。これは、どの運用会社でも同じです。

しかし、実際にはインサイダー情報なのか微妙なケースも出てきます。

極端な例であれば、弁護士資格を持つファンドマネージャーは法律事務所で副業をするかもしれません。その事務所では、企業弁護士なども働いていて、ある日、企業A担当の弁護士が来週の決戦の日のためにスゴい準備をしている。優秀なアナリストかファンドマネージャーであればピンときます。「そうか、企業Aはxxの件で企業Bと訴訟問題になっているから、その件が遂に決着が着きそうなんだな」「明日あの弁護士とランチに行って勝算を聞いてみよう」

極端な例ですが、似たようなケースはいくらでも考えられます。

インサイダー情報ではないけれども重要な公開情報をいくつか結びつけて未公開情報の類推を行うことはモザイクセオリーと呼ばれ、問題ないとされています。アナリストやファンドマネージャーの仕事の醍醐味でもあります。確実なインサイダー情報ではないけれど、それを類推する情報を集めにいくことが副業を通して可能となるのです。

ただ、結果的に副業勤務先でインサイダー情報を知った場合にどうすべきか?その可能性がある副業勤務先は禁止にするか?は運用会社としてキッチリ規定しておく必要があるでしょう。

受託者責任の問題

重要な情報を集めにいくのは、やり過ぎてインサイダー情報獲得に繋がらなければ問題にならないでしょう。

一方で、全く本業と異なる副業をするのは問題となるかもしれません。

アナリストやファンドマネージャーには、顧客の運用資産の保全・運用のために最善を尽くす義務があります。

就業時間外は自分の趣味の副業をしよう、となったとき、果たしてお金を預けている投資家はどう思うでしょうか?理解をしてくれるでしょうか?パフォーマンスが良ければ大丈夫でしょうが、苦戦しているとき、マーケットがクラッシュしたときにどう思われるでしょうか?

「こんなにパフォーマンスが悪いときにファンドマネージャーは何をやってるんだ!」「対策はしてるのか?なに!雑貨屋で副業してるだと!?けしからん!」という具合に歪んで捉えられ、揉め事になるかお客さんが離れていってしまうリスクがあります。

人材流出の問題

先日、会社の上司と運用会社が副業を解禁するとどうなるか?という話をしましたが、「スキルアップに繋がる」「本業以外の見識が広がって良い」という意見ばかりでした。大手運用会社の管理職は頭お花畑です(笑)

ファンドマネージャーに限った話ではありませんが、優秀な人ほど副業解禁によって副収入が増えることになります。そうするとなかには本業と同程度か上回る収入を得る人も出てきます。特にファンドマネージャーやアナリストの一部の人は特定の業界動向を詳しく分析しているために、「一発当てる」ようなビジネスチャンスを見いだすかもしれません。

そうすると何らかのきっかけで本業を辞める人が増えて、優秀な人ほど企業からいなくなっていきます。起業して会社を作る人もいれば、個人事業主として細々と事業を行う人も出てくるでしょう。

また、優秀なファンドマネージャーであれば自ら投資顧問業者としての免許を取って独立した運用をしたがるかもしれません。

まとめ

結論から言うと私は副業解禁してほしい派です。

外資系の運用会社であれば、既に副業をオッケーとしているところもあります。

日系の伝統的な運用会社の場合、証券会社とグループ企業になっているケースが多く、その組織構造も副業解禁を難しくしているでしょう。野村證券は副業オッケーだけど野村アセットマネジメントはダメという判断は方々から反発を食らうはずです。

私の感覚では日系の大手運用会社が副業を解禁するのはしばらく難しいと思います。まず副業解禁の前に改善すべき点がたくさんあるだろうという声も聞こえてきそうです。

レオスキャピタルやさわかみといった独立系の運用会社が先に解禁する可能性はありますね。

それではまた。