日本株の決済サイクルがT+2に変更。決済サイクルって何よ?

こんにちは。YUMAです。

昨日、東京証券取引所などが日本株の決済サイクルの短縮を正式に発表(日経新聞)しました。

東京証券取引所などは28日、株式売買の決済にかかる日数を2019年7月16日約定分から1日短縮すると発表した。

欧米などでは既に決済期間が2営業日になっているケースが多い。約定から決済までの期間が短ければ、金融機関や取引相手の破綻などで代金や株式の受け渡しが滞るリスクが軽減される。

決済サイクルって何よ?何が影響あるのよ?について解説します。

決済サイクルとは

通常、株式を売買するときには「約定日(trading day)」と「受渡日(settlement day)」という日が存在します。

約定日とは「この株をこの値段で売買した」という約束を定めた日で、受渡日とは「実際に約束した株式とお金を交換する」決済日のことです。

なので、実際には今お金がなくても株の買いを約定することはできます。受渡日に間に合うようにどこかからお金を調達すれば良いだけです。逆に、持っていない株を売り約定しても、受渡日までにどこかから株を調達すれば問題ありません。受渡日にしっかりと約定通りに決済を済ませれば何でも良いのです。

約定日と受渡日の間を何日空けるかは国よって異なります。現状では、日本株はこれが3日間空いています。つまり、約定日をTとすると受渡日Sは、S=T+3という関係があります。例えば、今日5/29に株を売買したら受渡日は6/1となります。

今回のプレスリリースはこれをS=T+2にしよう、例えば5/29に売買したら5/31を受渡日にしよう、という決済ルールの変更を意味しています。

世界的にはS=T+2が主流に

グローバルに比較すると、先進国すなわちMSCI World インデックスの採用国では、日本株とシンガポール株だけがT+3決済となっており、その他の欧米諸国はすべてT+2決済となっています。ここ1,2年で多くの国がT+3からT+2へと制度を移行しており、シンガポールも時期は未定ですがT+2へ変更を予定しています。

新興国であるMSCI Emerging インデックスの採用国で見ても、ブラジル、コロンビア、マレーシア、フィリピン、カタール、南アフリカだけがT+3決済です。つまり、新興国でもT+3決済は半数以下なんです。

グローバル株式市場のスタンダードはT+2決済となっており、日本もようやく追随する形となります。

メリットとデメリット

決済サイクル短縮化によるメリットとデメリットは何でしょうか?

メリット

  • 決済リスクの削減

決済サイクルが長いということは、株をxx円で売買したという約束をしてから履行するまでの時間が長いということです。この間は取引の当事者たちがお互いの信用リスクを負っていることになります。「3日前に株を買い約定したけど取引相手は今日の決済のためにきちんと株を用意してくれるかな」「3日前に株を売り約定したけど相手は今日きちんとお金を払ってくれるかな」という悩みが1日少なくて済むということですね。

  • 国際競争力の向上

前述したようにグローバルではT+2決済がスタンダードとなっています。そんななか、日本株だけがT+3のままでは国際競争力が失われてしまうでしょう。例えば、日本株を売ると同時にアメリカ株を買いたいという投資家がいても、日本株を売った資金はT+3で受け取るのに対して、アメリカ株を買い約定したら資金はT+2までに用意する必要があるため、日本株を売った資金は買いに充当できず、日本株の売りの翌日まで待ってからアメリカ株の買い約定をしなくてはならないという不便が生じます(逆にアメリカ株を売ると同時に日本株を買うのは資金が1日早く決済されるので可能)。

デメリット

  • オペレーショナルリスクの増大

トレード後の照合作業などの事務手続きに3日かけていたのが、2日で済ませなくてはならないため、事務負担が増大し、オペレーショナルなリスクが増えます。

  • システム改修に伴うコスト

日本のトレードシステムや業務フローが長らくT+3で構築されてきたために、それらを一新するためにシステム費用がかかります。

個人投資家への影響は配当落ち日の変更のみ

運用会社などプロにとっては大きな制度変更ですが、個人投資家にとって影響が出るのは配当落ち日が1日遅くなるということだけです。

配当落ち日については以下の記事をご覧ください。

例えば、トヨタのように3月末が決算で配当の権利が付く銘柄があったとして、配当を受け取りたいと思ったら、今まではその3日前には株の買付をしなくてはならなかったのに対して、2日前に株を買い付ければ済むことになります。権利が落ちるのも1日後ろにずれますから、配当落ち日も1日ずれることになります。

この辺りは来年の7月、実際の制度変更が近づいたら証券会社各社からあらためて周知があるでしょう。

 

ということで、個人投資家の方にはあまり影響がない話ではありましたが、日本株式市場がようやくグローバルスタンダードに移行するという記念すべきリリースでしたので記事にしました。

話としては何年か前から上がっているにも関わらず、諸外国と比べて実に遅い対応でしたね。。。

それではまた。